CREST「革新的計測解析」
社会課題解決を志向した革新的計測・解析システムの創出
分子・情報技術の創発による液相分離の限界突破と社会実装
Project
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の発展
HPLCは半世紀以上の研究開発により、分離剤の汎用性、分解能、高速化、検出器の高感度化、自動化などが進展してきました。 1検体数万成分の検出、数秒での分析、検出限界が1アトモル以下など、非常に高い分離能、高速分析、高感度化が実現されています。
現在の課題と限界
既存の分離機構では、一部の特殊な低分子や高分子化合物の精密分離が難しい場合があり、難分離物質群の分離が生命科学、環境、工業化学の飛躍的な発展をもたらすと期待できます。具体例としては、重水素化医薬品、ハロゲン化物質、タンパク質の置換基の違い、抗体の糖鎖の違いなどが挙げられます。また、HPLCなどの液相分離法では、個別の分析条件の最適化に時間とコストがかかるため、機械学習による液相分離の保持予測の実現によって、HPLCの汎用性がさらに向上すると予想されます。
研究の方向性
①微弱な分子間相互作用の拡張による難分離物質の精密分離
②機械学習を駆使した液相分離における精密保持予測
研究テーマ
◇π電子に起因する分子間相互作用を利用した高分離能カラム固定相の開発
◇分子動力学やスペクトル解析に基づく微弱相互作用の定性、定量
◇溶質、溶媒、固相材料の物理・化学インフォマティックスに基づく液相分離保持予測
目指す成果
- 極めて微弱な相互作用の利用: 炭素材料やその誘導体での微弱な分子・原子間相互作用を活用し、H、N、O、C、ハロゲン原子の同位体分離や高分子末端の1原子(団)違いの分離を実現する。
- 精密液相分離保持予測: 分離対象物質および液相(溶媒)の化学的パラメータ、カラムのサイズや固相のナノメートルからミクロンサイズ構造、液相の流体情報を考慮して、精密な液相分離保持予測を行う。
本研究の進展によって、液相分離の限界を突破し、精密で効率的な液相分離システムの創成が期待されます。